飼い主さんにとって、不安が強い医療の一つが全身麻酔ではないでしょうか。
獣医学の発展とともに麻酔薬や麻酔手技は改善されていますし、我々獣医師も安全な麻酔管理ができるように日々研鑽しています。
それでも尚、「麻酔だけは嫌」というお声を頂くことが多々あります。
そこで今回は、「知ることで全身麻酔へのご不安が和らげば」と考え、当院における麻酔管理機器を少しだけ紹介いたします。
当院の手術環境について
上の写真は現在の当院の手術室で、周術期(手術前後)に必要な機器が映っています。
今回はこの中で、「麻酔器/人工呼吸器」と「加温システム」について紹介します。
麻酔器/人工呼吸器
麻酔器は、吸入麻酔薬と酸素をミックスして患者に運搬する機械です。
麻酔=注射というイメージの方も多いようですが、現在では注射麻酔薬と吸入麻酔薬の組み合わせが一般的です。
人工呼吸器は患者に対して適切な量の呼吸を自動的に行なってくれる機械です。
手動での呼吸で起こりうる人為的ミスが無く、安全な呼吸管理しいては麻酔管理が可能です。
※当院では現在、下記の一体型の動物専用モデルを使用しています。
加温システム
低体温は、実は全身麻酔中の大きな課題のひとつです。
(基礎代謝率と筋活動の低下や、術野からの熱喪失がその原因です)
低体温は麻酔からの覚醒を遅くさせますし、重度の場合は呼吸停止や心室細動の原因にもなります。
そこで当院では、温水循環式の加温システムを使用して、手術中の動物を保温しています。
目立たない機器ですが、特に高齢動物や幼若動物においては体温管理の有無が生死を分けることもあります。
最後に
もちろん全身麻酔は可能な限り避けるべきものであり、
当院でも内科治療で改善が見込めるケースで、外科治療を提案することはほぼありません。
しかしながら、外科手術の多くは全身麻酔を必要とします。
中には生検(がんなどの一部を採取する検査)などの中にも、全身麻酔を必要とする事もあります。
皆さんの愛犬・愛猫に全身麻酔が必要になった時、よく主治医の先生と相談し、納得してそれを受けてください。
そして私達獣医師の側もまた、「先生なら任せる」と信頼していただけるように努力していかなければなりません。