メラノーマ(悪性黒色腫)は「ホクロのがん」とも呼ばれ、犬や猫でよくみられる腫瘍の一つです。
南海キャンディーズのしずちゃんの専属コーチがメラノーマで亡くなられたのは記憶に新しいところです。
競馬ファンの方にとっては有名な芦毛の名馬「タマモクロス」の父馬で、『白い稲妻』と呼ばれた「シービークロス」の病気でもあります。
「ホクロのがん」だから皮膚に発生すると思われがちですが、実は皮膚だけでなく「口の中」や「眼の中」に発生する腫瘍として有名です。
今回は、そんな皮膚以外のメラノーマについて少し書きたいと思います。
①口腔のメラノーマ
上の写真は、私が以前担当させていただいたラブラドール・レトリバーの口腔内に発生した悪性メラノーマです。
『ホクロのがん』なのに黒くないのがお分かりになるでしょうか?
実は口腔内のメラノーマはメラニン欠乏しているものが多いのです。
よく「口の中に黒い部分があるからメラノーマじゃないか?」と来院される飼い主さんがいらっしゃいます。
たしかにそのような新生物を見つけた場合は診察をおすすめしますが、
無色の隆起部位も決して侮らないで下さい。
治療としては、外科手術を基本として放射線療法・化学療法・免疫療法を組み合わせて実施します。
(このように、複数の治療法を組み合わせることを『集学的治療』といいます)
しかしながら、口腔内のメラノーマは転移が多く、根治が難しい腫瘍です。
可能な限り初期に治療が開始できるよう、まめな口腔内のチェックと早期の受診を心がけてください。
②眼のメラノーマ
上の写真は、手術を担当させていただいたダックスフンドの目に発生したメラノーマです。
転移が少なく、良性の事が多いのが口腔内メラノーマとの違いです。
無治療で経過観察することもありますが、緑内障などの合併症を起こす場合は眼球摘出による治療を行います。
※眼のメラノーマとよく似た病気として、ぶどう膜の黒色嚢胞(色素上皮嚢腫)があります。
こちらは腫瘍ではありませんので、エコー検査等でメラノーマと鑑別します。
今回紹介させていただいた2例に限らず、どのような腫瘍も早期発見が治療の鍵です。
ただでさえ私たち人間よりも短い動物達の一生なのですから、少しでも一緒にいられるよう精いっぱいの事をしてあげたいですね。